元気な歯してますか?

いい歯の健康と健全な食生活は、豊かな日常生活にとって必要不可欠です。いつまでも健康な歯と健康な体を保つために、私たちはお役に立ちたいと願っております。

高齢者、障害者と歯科保険。

 新たな高齢者介護システムとして、介護保険制度が導入されてからすでに1年以上が経過しました。その中で基本理念として「自立支援」が掲げられ、高齢者の生活の質の維持、向上を目指すことが述べられています。しかし、歯科口腔領域に対するケアは決して十分とは言えず、むしろ不衛生な口腔、また咬合不全という状況が見受けられます。

 顎口腔系は、食べ物を取り込むことをはじめ、呼吸、発音など、生命を維持し日常の生活を続けていくために必要な機能を備えています。その意味で口腔ケアは人々のQOLを確保するために極めて重要な役割を果たすことになります。ここで私たちの歯科領域から応援できることを考察してみたいと思います。
 口腔の機能が失われた状態を考えるとき、そのことが内臓をはじめとして全身的に大変な悪影響を与えるであろうコトは容易に推測されます。逆に、顎口腔系の機能を回復させることにより、摂食ばかりでなく、歯と歯周組織のバランス、上顎と下顎のバランス、更に頭蓋と全身の骨格系、筋肉系とのバランスの改善ということが期待されます。つまり日常の生活にも大きく寄与することになります。

口腔を不潔にすると・・・

 口腔内の細菌が繁殖し、歯垢(プラーク)が形成蓄積されることにより、様々な障害が起こります。まず、歯肉や粘膜が炎症をお越し、化膿して腫れたり血や膿が出て来たり、それはやがて歯の根をグラグラにして歯牙の脱落へと進行していきます。当然う触も発生します。
 これらのことにはひどい痛みや発熱、口臭などの苦痛や不快感が伴っています。摂食が満足にできないばかりでなく、偏った噛みかたを続けることにより、不適当な負担が歯周組織に、筋肉に、顎間接に、頚椎・脊椎・腰椎に、と広範囲に及ぶことになります。
 身体をさせるべき筋肉骨格系のアンバランスは、食事という場面に限っても、食欲の減退、咀嚼能率の低下、消化器系への負担過重、食事時間の長期化、疲労の蓄積という悪循環につながります。
 特に嚥下障害がある場合には、誤嚥性肺炎が大きな問題になります。高齢者の肺炎の約6割が誤嚥性肺炎であるといわれる程で、不顕性誤嚥も含めて、誤嚥による口腔内の細菌の侵入繁殖が多いことを示しています。

口腔清掃によって・・・

 介護の現場にあっては、口腔ケアはどうしても後回しにされがちです。それは、その他のケアに比べて緊急性が少ないこと、目に付きにくいこと等が原因として考えられますが、本当はその重要性の認識がしっかりできていないこと、そして口腔ケアの方法が、あまり知られていないということが、理由として挙げられるべきでしょう。
 まず、口を開けてもらうことです。入れ歯を外して洗う、ブクブクができればしてもらう、歯ブラシを入れてみる、口の中をのぞいてみる。始めから全部をきれいにしようとしなくても、たとえ真似事の程度であっても何かしてみることです。すぐに変化が出ます。
 口臭の減少、歯肉からの出血の減少(唾液に混じる血液の減少)、これらのことは比較的早くから実感できます。介護する人、される人両方で実感できます。
 次に、歯牙、歯肉、舌、口腔粘膜等の変病に対する応急処置の段階になるわけですが、そこまで到達すると口の中の状態はかなり正常に近づいてきます。ドロドロになっていた唾液が、透明なサラサラした本来のすがたをみせるようになり、赤く腫れていた歯肉はピンクの透明感を示すようになります。
 できるだけのケアを続けることによって、唾液の分泌量も増加し、口の中にさっぱりした環境をつくりあげることができることから、気分的にも爽快感がでてきます。味覚にも変化が出てきて、結果的に食欲の増進がみられます。このことは介護に携わる人たちにも、とてもいい変化をもたらすことでしょう。

安定した咬合の付与・・・

う触などで壊れた歯牙の修復を行い、滋賀の喪失には 入れ歯を入れるなどして、安定した噛みあわせを確立することが必要になります。
 「しっかり噛む」ことにより栄養摂取の面での改善が期待されることはもちろんですが、リハビリの効果もあります。
 「食べる」という行動は、口唇、歯牙、歯肉、舌、頬、咽頭、等々と様々な器官を使い、頭部から頚部に及ぶ多くの筋肉を使った動きですから、咀嚼することによってこれらの器官の訓練にもなるわけです。
 咬合を整えた高齢者の自立度が飛躍的に改善しているという報告、姿勢や歩行の安定にも極めて効果的だという事実も指摘されており、介護をする側、受ける側双方に大きなメリットをもたらしています。